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2012年1月9日月曜日

ダイコントライボロジー

このblogを読んでくださっている方,ありがとうございます.
昨年より引き続き,月に1回以上くらいのペースで更新していきたいと思います.
本年もどうぞよろしくお願いします.


さて,年明け最初のタイトルは「すりおろしのトライボロジー」改め,「ダイコントライボロジー」です.

もちつきをね,正月になる前にしたんですが,その時に,大根おろしをつくりましてね….

はて,トライボロジーとはなんでしょうか.
トライボロジーの定義は,
Tribology is the science and technolgy of interacting surfaces in relative motion and of related subjects and practices.
となっており,訳すと,「相対運動の中で相互作用しあう(二)表面と,またそれに関連する問題と実際の,科学と技術」であるこれは,1966年イギリス教育科学省の委員会で制定されている.まぁ,広く言えば,「潤滑」とか,そういう話しである.

関わってくる分野としては,摩擦,摩耗,軸受,機械装置などが対象になり,機械工学,物理学,化学,材料科学などが含まれる.最近はやりの学際領域ってやつだ.

考えてみればいろいろなところに二表面が存在する.地震だってマクロに見れば二表面が相互作用しているのだろう.災害においては,地すべりや雪崩なども,もしかしたらそうかもしれない.流体も粘性をもち,表面と作用することから,これもトライボロジーで扱われているのだろう(きっと).原子力発電所で,配管が削れる事故とか,かつてあったかと思う.小学生の頃のニュースだったかしら.もっと身近には,ブレーキとか,靴底とか,タイヤとか,そういうところにもある.我々は,摩擦のある世界に生きているのだなぁ,と改めて思う.

ところで似た世界に,「接着」を扱う人々がいる.日本接着学会のページから引用する.
接着を「2つ以上の物体をある材料を用いて一体化し、外部からの刺激に対し一体として反応させるようにすること」と定義すれば、接着学はこの一体化の学理を究め、その反応を応用開発する学問体系といえる。
接着現象は被着体の固体表面の物性のみならず接着剤として用いる固体あるいは液体の物性にも密接に関係しており、これらは高分子化学、物理化学、界面化学の学問体系に関連づけられる。さらに接着を対象とする材料も、高分子はもとより金属、木材、セラミック、それらを複合した材料などきわめて多くの種類にわたっており、これらの材料の物性は材料工学の学問体系に関連づけられる。
一方、接着の応用技術を考えてみると、航空宇宙機器、自動車、橋梁、家屋、農業、医療、電気、電子機器、包装などほとんどあらゆる産業分野で接着が応用されている。
このように、たとえば接着に関連する学問体系を縦糸、応用技術を横糸とすると接着学は大きな織布を形成しており、これほど広範囲を包含する学問体系はほかに見あたらない。
ふむふむ.つまり,何らかの物質を用いて二つの物体を相対運動しないようにするということだ.相対運動が歩かないかによってトライボロジーと接着が変わってくる,ということ…なのかしらね.


それで,ダイコンについて気になったのは,このダイコンが削れる仕組みである.
それについてちょっと検索していたらこんなものが出てきてしまった…ちょっと読みたいw
http://157.1.40.181/naid/10024785542#ref

気を取り直して,荷重と接線力,それに対しての変形と,摩擦,摩耗を考えてやる必要がある.
摩耗に関しては,おそらくアブレシブ摩耗,というやつなのだろう.摩擦について考えるなら,間に流体みたいなものが発生するので,その潤滑効果も考えてあげる必要がある.

今回問題にしたいのはなぜ削れるか,なので摩耗である.
摩耗は,機械的な作用による材料表面からの物質の逐次減少と定義される.
そのうちアプレシブ摩耗は,「硬くて粗い面又は硬い粒子がやわらかい相手面を切削することにより生じる摩耗」であり,これ,摩耗させたいときに使うんだよね…?w
今回は,固定された切削材料が,ダイコンの断面を削っていく.これを二元摩耗という(粒子が表面の間に入ると三元摩耗になる).

一つの突起がダイコンを摩耗させると考え,突起を円錐だと仮定し,切削された表面とされる前との表面の高さの差を$d$ ,円錐角を$\theta$ ,高さ$d$ における円錐の半径を$r$ とすると,摩耗される体積は,単位(すべり)距離あたり,$$rd = r^2 \cot \theta$$となる.一つの突起が支える荷重は,(単位長さあたり荷重,あるいは最大接触圧力,あるいは)硬さ$p_0$ を用いて,$$\frac{\pi r^2 p_0}{2}$$
また,$n$ 個の突起がある場合,全突起が支える荷重$W$
$$W = \frac{n \pi r^2 p_0}{2} \rightarrow nr^2 = \frac{2W}{\pi p_0}$$
$n$ 個の突起による単位すべり距離当りの摩耗体積$Q$
$$Q = n r^2 \cot \theta = \frac{2W}{\pi p_0} \cot \theta$$
すべり距離$l$ の間の摩耗体積$V$
$$V = Q \cdot l = w' \frac{Wl}{p_0}$$
となっている.

さて,おろし金の突起はマクロに見れば,円状にならんだものになる.
摩耗面も,たしかに平行に筋が入る.
これに有効な突起の数はいくつだろう…

ちょっと時間がなくなってきたので割愛しようと思うが,どのくらい,どの方向に押せば最も削れるかが知りたかったのだ本当は…こんど実験すべきなのかもしれない.


最後はグダグダになった.
しかし,このblogでも$\LaTeX$が使えるようになった.やったね!(そこに大部分の時間を使ってしまった)



遅くなりましたが,新年明けましておめでとうございます.
今年も皆さんにとって幸多き年でありますように.

参考:http://www2.kaiyodai.ac.jp/~jibiki/ouriki/text/tribology_text.pdf
など

2011年8月11日木曜日

埼玉大学脳科学融合研究センターシンポジウム、一応のまとめ:前半

埼玉大学脳科学融合研究センターのシンポジウム「脳の未知に挑む技術」に行ってきました。
先生方は、自分の研究分野と脳科学を繋げようと頑張っているな、という印象だった。

簡単にまとめる。

トップバッターは、大倉先生「in vivo脳での神経回路活動の理解を目指した新技術研究開発

神経細胞の、Ca2+の濃度変化に応じて、GFPの分子構造を変えて、濃度が高いときに光る、というような分子(タンパク質)を作り出した、という話。
これはもちろん、遺伝子に入れてあるのだが、それは発現する場所、時間を任意にコントロールしたいためである。
実際に、高濃度(100μM)のグルタミン酸に対する応答として、spineのカルシウムイオン濃度変化を観察した、ということであった。


二番目は、化学科の中林先生「塩水の中で動くいい加減だが堅牢な電気化学回路
という話で、

非線形振動子の話は、まあちょっとわからなかったので割愛するとして、腎臓の腎孟(じんもう)という器官では、尿を濾すためにポンプ運動をしている。この器官の上流を潰すことによっても、このポンプ運動をつづける。ただし、その周期は長くなっているという。そこで、腎孟のモデルをつくり、このポンプ運動を再現しよう、という話であった。
ポンプ運動の周期を、細胞の固有振動数を変えずに、変えることができる、という二つの例が示され、後者の細胞数の変化によるモデルが現実系に近いのでは、という検討がなされていた。



三番目は、若狭先生による、「MFEプローブによるナノ反応場解析

生物が(地球)磁場を感じる仕組みについてで、European Robbinsやウミガメの観測、実験をもとに、磁場センシティブな生物とそのラジカル対を用いた仕組みを話された。
よくわからなかったので、もう一回ゆっくり聞きたい。
たぶん、キィワードは「ケージ場」


四番目は、高柳先生の、「プロトン移動反応の量子シミュレーション

古典的にはプロトン移動は「玉突き」のような現象といて理解されるが、分子の小さなクラスタについては、量子的に考える必要がある、ということが示され、100Kにおける量子化学的シミュレーションと300Kにおける古典的シミュレーションの熱、量子ゆらぎがほぼ同じ様なものになっている、ということが例示された。
また、水和した硫化水素について、同じ温度での古典と量子シミュレーションが比べられ、古典における水の相がどちらかというと固体にちかく、量子においては液体に近い(クラスタだから、そこまで相について言えるとは思わないけど)ということが言われた。先生によれば、量子論では、相転移が起きやすいということだった。

高柳先生の話で重要だったのはたぶん、「核の量子性」で、それゆえに分子動力学法がちょっと信用ならないもの、という話をしていた。


次に講演されたのは、綿貫先生で、「脳と機械をつなぐブレイン・マシン・インターフェイス技術の開発

これは、川口の鋳鉄の技術を伝えるのに、拡張現実や、それと、入力に対して応答するある形のもの(インタフェイス:たとえばクレーンのリモコン(に似た何か)であり、また「鋳鉄の時に使う蓋」の取っ手だったり)を用いてみた、というものだった。
人と脳をつなぐのには、まず人の脳の活動を調べることが重要だが、そのために、脳の血流を測定する機械が必要で、名前は忘れた(←!)ものの、表層の活動部位が非侵襲的にわかるということが利点である。
この技術を用いて、現実を、初心者に使いやすい形で補助していく、ということが行われている、という話だった。

他にも、感性の話とかあったけど、割愛された、と思う。


埼玉大の先生で最後に講演されたのは、西垣先生で、「分子細胞ネットワークを知るための4次元発現パターン解析法の開発


脳は、ネットワークが何らかの機序によって発生し、保存されることによって動いている。
このワイヤリング・パタンを探るために、脳のネットワークがどうなっているのか知ろうというもので、まあ、この研究室で昔から開発してきたマイクロアレイやペプチドアプタマーの開発技術を使って、発生から追っていこう、というもの。
しかし、これはやはり、細かいブロックを作って確かめようというもので、生体ではできないようだ。
そこで、西垣先生は、まあ、シンクロ的に学習する系を作って、それで時間的変化を追おうという話だったが…それはどうかな…



後半は、また明日。