2011年8月13日土曜日

埼玉大学脳科学融合研究センターシンポジウム、一応のまとめ:後半

昨日に続く。

この日のメーンエベント、理研の俣賀先生による「新旧の技術を用いて大脳皮質・シナプス可塑性の作用機構を知る」と、富山大の井ノ口先生による「記憶形成の分子・細胞機構」である。

俣賀先生のお話は、

シナプス可塑性の話で、眼優位可塑性が例に持ちだされた。
シナプス可塑性とは、神経ネットワークのつなぎ替えが起きやすいことをであり、眼優位可塑性をもつ、とは、普通の視野を持った状態だと視神経から入った情報を視交叉というところで3次元的に投影しなおすのだが、どちらかの眼が見えないときに、いらない神経を繋ぎかえる、という操作が出来る状態にあることである。
これは、三次元的投影が可能な、眼が平行についた(狭い視野の)動物にしかないと思われていて、実験動物として猫を使っていたが、ネズミにもあることがわかってきた。
それで、最近はネズミを使って実験を行っている。

シナプス可塑性は、ある時期を過ぎると低くなる。そのシナプス可塑性が高い時期を臨界期、という。たとえば、ある動物(ガンやカモ、ニワトリ)は母親を認識するときに、最初に視認した同種の動物を母親だと認識するが、その書き換え(訂正)は生後14-42時間にわたって可能である、というふうである。
ついでに述べておくと、人間の言語習得もこれに含まれ、12年ほどが可塑性が高いとされる。


さて、視神経は、左世界が右脳に、右世界が左脳につながれていることは基本的であるが、その接続先には、片眼性のニューロンの領域がスライスで3mmあり、その外側に600μmにわたって両眼性の細胞がある。
片眼性とは、片方の眼から入ってきた光刺激にのみ反応する細胞であり、両眼性は、どちらにも反応する。
可塑性のあるときは、両眼性細胞が片眼性になりやすく、実験により、野生型マウスでは、その臨界期が生後4日であることが確かめられた。(Streiker et al.)
また、グルタミン酸、GABA(check!)をノックアウトしてあげると、臨界期が遅くなることが確認されている。

どのように繋ぎ変えられているのかを検証するため、シナプスの架橋を外すのにプロテアーゼが用いられていると仮定し、tPAという物質に絞ってみてみたところ、実際にこれによって変化が起きている事がわかった。
spineの可視化を遺伝子銃によって行い、この結果、spineが経験によって剪定されていることがわかった(これ他のところでも聞いたけどどこだっけ?)

さらに、それによって制御されるタンパク質を新たな技術、Multiple Reaction Monitaringで発見する、というものであった。。。

何を言っているのかわからないと思うが、僕にもわからない。
解説者をよこしてください。


井ノ口先生の話は、記憶の話であった。
基礎として、記憶のプロセスは、
経験→書込→貯蔵→想起
であり、貯蔵のところで、似た情報を連合させたりする。
また、記憶の質が変わるということが語られた。

長く覚えている記憶について、古い記憶はどうやって保存されているのか、という話が本題である。

まず、記憶について、どうも「強化仮説(:電線が強化されて、情報が保存されていく)」は正しそうだ、ということが語られた。

その後、「完璧な自白」の話が(この先生はまるで声優のようであった。おもしろい)語られ、長期間に渡る記憶の保持や、時間経過に伴なう記憶の質の変化について再起させられた。

記憶はまず、海馬に入って、その後大脳皮質に保存される。
海馬にある時を、海馬依存的といい、ない時を海馬非依存的という。
ない時には、大脳皮質にあることがわかっている。
ここに転送の作業があり、人間だとその期間は半年から1,2年程度だと言われているが、マウスでは28日後には転送が終了している。

もちろん、転送の仕組みはわかっていないが、ここで現実的な最大の疑問は時間と共に海馬から情報を消去するメカニズムであった。

結論としては、これが、海馬での神経新生にあることがわかったのである。

そもそも、海馬での神経新生は、「SSRIの作用に関与する」とか、「記憶の獲得に関与している」とか言われてきたが、井ノ口先生らは「既存の神経回路を撹乱する」として、確かめた結果、わかった、ということだ。彼らの研究はCELLの表紙を飾ったという。すごい。

また、彼らは、記憶の質が大脳皮質に移ったときに変化するか、ということを調べていて、少なくとも28日では変化していないことが見出された、ということだ。

ところで、神経新生の促進は、たぶんメモリ容量を増やし、記憶を促進するだろうと言われているが、それは、DHAやEPAなどのω3系の脂肪酸によって促進されるということだったので、みなさん、運動しましょう!w


以上、まとめを終わる。

0 件のコメント:

コメントを投稿